はじめに
大切な退職金をだまし取られないために
退職後、長年の働きの成果として受け取った退職金。 これをどう使うか、どう守るかは、今後の暮らしに直結する大切なテーマです。
しかし近年、このまとまったお金を狙った金融詐欺が増えており、特に高齢者がターゲットになるケースが後を絶ちません。
「元本保証なのに高利回り」 、「絶対に損しない、安全な投資」、 「今だけの特別な話」
こうした話が出たら、一度立ち止まってください。
この記事では、金融詐欺の手口と見抜き方、そして被害に遭わないための具体策をわかりやすく解説します。
1. 高齢者が狙われやすい理由
- 退職金や長年の貯金など、まとまったお金を持っていることが多い
- 投資や金融の仕組みに慣れておらず、専門用語などに戸惑いやすい
- 「損をしたくない」「家族に迷惑をかけたくない」といった気持ちにつけ込まれやすい
- 日中ひとりで過ごす時間が長く、訪問営業や電話に応じてしまいやすい
詐欺師は、そうした状況にある人を狙って、最初は親切で丁寧な態度を見せながら接近してきます。
そして、「家族のため」「老後が安心になる」などといった感情に訴える話をして、相手の気持ちに寄り添うふりをしながら信用させ、うまい話を信じさせようとします。
2. よくある金融詐欺の手口5選
(1)高利回り・元本保証をうたう投資話
「年間10%の利回りなのに元本は保証されています」など、一見すると安心できそうな言葉を使ってきます。
しかし、元本保証で高利回りの投資は現実にはほとんど存在しません。
銀行の定期預金ですら0.2〜0.5%程度、どんなに高金利でも1%程度です。(※キャンペーン中などの場合)
こうした話は、ほぼ間違いなく詐欺でしょう。
(2)特別なルート・今だけのチャンスを装う
「この投資は特別ルートなので一般には出回っていません」「今日中に決断すれば参加できます」といった“今だけ”を強調してきます。
冷静に考える時間を与えず、焦らせて判断力を鈍らせるのが典型的な手口です。
(3)身内を装う・信頼関係を悪用する
「お母さん、オレだけど…」と家族を装って電話をかけてきて、「事故を起こしてお金が必要」などと理由をつけて振り込ませようとします。
いわゆる「オレオレ詐欺」ですね。
また、知人や近所の人を装って信頼させ、投資話に誘導するケースもあります。
さらに、近年では「闇バイトに関わってしまってお金を要求された」など、身内がトラブルに巻き込まれたふりをして金銭を求めてくる新しい手口も報告されています。
突然の電話やメールでお金を要求された場合は、まず落ち着いて、本人に直接確認することが大切です。
(4)有名人・公的機関の名前を勝手に使う
「〇〇省も後押ししている投資です」「テレビで有名な〇〇さんもこの投資をしている」といった言葉で、信頼感を演出します。
しかし、こうした名前の使用は無断で行われていることが多く、裏付けのない情報です。
公式な発表かどうか、必ず確認しましょう。
少し別の例ですが、「あなた以外はみんなやってるよ」などといって騙してくるものもあるようです。
気にしないようにしてください。
(5)家に訪問して契約書にサインさせる
「無料で相談に乗ります」と言って訪問し、詳しい説明もないまま契約書に署名を求める手口です。
専門用語や小さな文字が多い契約書を急いで書かせるのは、詐欺の典型的なパターンです。
少しでも不安があれば、その場でサインしないようにしましょう。
ただより高いものはないと思って、慎重に対応してください。
3. 詐欺を見抜くチェックリスト
詐欺かもしれないと疑うべき場面には、いくつかの共通点があります。
以下のポイントをひとつでも感じたら、すぐにその場で判断せず、誰かに相談しましょう。
- 本当に元本保証で高利回り?
“絶対に損をしない”、”利回りが10%以上”といった言葉が出てきたら注意。高い利益が保証される投資は、通常ありえません。 - 話を急がせていないか?
「今日中に決めれば特別に…」「すぐに申込まないと枠が埋まる」など、冷静に考える時間を与えず急がせてくるのは典型的な詐欺の特徴です。 - 説明が難しくてよく分からないまま話が進んでいないか?
専門用語や複雑な話をされ、内容を十分に理解できないまま契約を急かされたら危険信号。少しでも「よく分からない」と思ったら立ち止まりましょう。 - 契約書や書面の確認を求めても見せない、説明をはぐらかす?
正規の取引であれば、書面の提示や説明は当然行われます。それを拒むのは不自然です。 - 「家族には内緒に」「誰にも相談しないで」と言われていないか?
一人で判断させようとするのは、第三者の目を避けたい詐欺師の常套手段です。
これらにひとつでも当てはまる場合は、その場で契約せず、すぐに中断し、信頼できる人や専門機関に相談することが重要です。
4. 被害を防ぐための行動リスト
被害を未然に防ぐには、日ごろから「少しでもおかしい」と感じたら行動を止めることが何よりも大切です。以下のような行動を心がけることで、詐欺に巻き込まれるリスクを大きく減らすことができます。
- 少しでも不安があれば、その場で契約・振込をしない
たとえ話が魅力的に聞こえても、少しでも不安を感じたら即決せず、その場で中断することが重要です。 - その場で判断せず、一度家族や専門機関に相談する
決断を急がず、信頼できる家族や第三者に話を聞いてもらいましょう。一人で悩まず、冷静な意見を聞くことで防げる被害があります。 - 「あなただけに」「今だけ」と言われたら疑う
特別感や緊急性を強調するセリフは詐欺の典型的な手口です。こうした言葉が出たら、一歩引いて考えることが大切です。 - 相手の名刺や所属先を必ず確認し、電話番号をネットで検索する
会社名や担当者の連絡先が本物かどうか、検索すれば実在するか・苦情が出ていないかなどが確認できます。 - 電話や訪問時には録音・記録を残しておく
もしものときの証拠として、通話の内容や訪問時のやり取りはできるだけメモや録音で残しておきましょう。
5. 信頼できる相談機関一覧
もし「詐欺かもしれない」と感じたり、「これは怪しいけど、誰かに聞くほどではないかも…」と悩んだときは、ひとりで抱え込まず、以下のような信頼できる窓口に相談しましょう。
相談するだけで、被害を防げるケースがたくさんあります。
- 警察庁「相談専用ダイヤル#9110」
全国共通の警察の相談ダイヤルです。最寄りの警察相談窓口につながります。緊急時以外の「ちょっと心配」「怪しい気がする」でも利用できます。 - 金融庁「金融サービス利用者相談室」:03-5251-6811
金融商品や業者に関する不安やトラブルを専門に扱う相談窓口です。平日の昼間に対応しています。 - 消費生活センター(消費者ホットライン「188」)
お住まいの市区町村ごとに設置されている窓口に、自動で案内されます。契約や販売手口の相談が可能です。 - 信頼できるご家族
「こんな話を聞いたけど大丈夫かな?」と思ったら、まずは身近なご家族に話してみることが大切です。第三者の目が入るだけで、多くの詐欺は防げます。
まとめ|まずは「騙されないこと」から始めよう
退職金を使って老後を安心して暮らしたいと考えるのは、ごく自然なことです。 ですが、その第一歩は「どう増やすか」ではなく、「どう守るか」から始めるべきです。
投資には元本割れのリスクがありますが、詐欺は最初からお金をだまし取ることを目的にしています。 つまり、投資と詐欺はまったく別物であり、詐欺に遭うと資産をすべて失う危険すらあるのです。
「うまい話には裏がある」 「誰かに相談するのは面倒だから…」「騙されていると思うと恥ずかしい」と思ってしまうその一瞬が、被害につながることもあります。
もし少しでも不安や違和感を感じたら、その直感を大切にしてください。 遠慮せず、ご家族や公的な相談窓口に話してみるだけで、詐欺を防げるケースはたくさんあります。
大切な退職金を守ることが、安心して未来を築くための第一歩です。
※この記事の内容は情報提供を目的としており、特定の業者や契約を誘導するものではありません。
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